Sora2は日本の著作権者を軽視しているのか
- tokuhata
- 10月4日
- 読了時間: 6分

次世代の動画・音声生成モデル「Sora 2」がOpenAIからリリースされました。機能概要、使い方、料金プラン等については各種ニュースリリースが多数閲覧可能なので省略し、ここでは物議をかもしている著作権問題について整理します。
1.具体的な事例と懸念
• 日本キャラクターの生成動画: Sora2で生成された「ドラゴンボール」「ナルト」など日本のアニメ風動画がSNSに多数投稿され、そのクオリティの高さが、著作権侵害の懸念を生んでいる。
• 一方で、米国のキャラクタ、例えばディズニーのミッキーマウスの生成はブロックされる。日本の著作権者は軽視されているのか?
• 任天堂の対応: 任天堂は、過去に生成AIによるマリオの著作権侵害画像に対して削除要求を行っており、同様の事態がSora2でも発生する可能性が指摘されている。
• 政治家からの言及: 自民党の塩崎あきひさ衆議院議員は、Sora2の動画について「重大な問題」と指摘しており、日本国内でも生成AIと著作権の問題が政治的な議論に発展する可能性が高い。
この背景には、法制度の違いと、OpenAI側の対応姿勢が関係していると考えらます。
法制度の違い:
・日本の著作権法: 著作権法第30条の4により、著作権者の利益を不当に害さない限り、AI開発のためのデータ収集・解析行為は原則として許可されている。これは、権利者の許諾なく著作物を学習データに含めることをAI開発側が正当化する根拠となり得る。
・米国の著作権法: 著作権侵害の判断は「フェアユース」という原則に基づいて行わる。フェアユースは明確な基準がなく、案件ごとに裁判所の判断によって左右されるが、著作権者の権利をより強く保護する傾向がある。
OpenAIの対応方針の違い:
米国での訴訟リスク: ディズニーなどの米国大手企業は、著作権侵害に対して訴訟を起こす可能性が高いと見られている。OpenAIは、訴訟リスクを避けるため、米国の著名キャラクターの生成にはより厳しい制限を設けていると推測される。
ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによると、OpenAIはSoraの最新版で、著作権者が自ら申し出た場合のみ学習データから除外する「オプトアウト」方式を導入する意向とされる。これは、日本のアニメや漫画の著作物が、権利者が特別な手続きを取らない限り、AIの学習データとして使われ続ける可能性を示唆する。
まとめると、
• 米国やEUでは、著作権者が明示的に著作物の利用を拒否できる(オプトアウト)
• 日本では、AI学習目的なら原則利用OKで、拒否の仕組みがない
• 米国のスタジオ(ディズニーやマーベルなど)はオプトアウト申請を済ませている可能性がある。
• 一方、日本の多くの著作権者はこの仕組みを知らないか、申請していない可能性が高い。
さらに、米国では著作権保護のロビー活動が強く、企業も法務対応に慣れている一方、日本ではAIに対する著作権意識がまだ追いついていない部分もあります。OpenAIが意図的に日本を軽視しているというよりは、制度の違いと情報格差が原因ともいえそうです。
とはいえ、生成されるから作品にしてよいということにはならないのでユーザのモラルの問題でもあります。
2.著作権協会および立法府である政府に提言すべきこと
2.1立法府(政府)への提言
(1) 著作権法第30条の4の見直しと運用ルールの明確化
•「不当に害する場合」の解釈明確化: AI学習データ利用の許諾を原則不要とする著作権法第30条の4の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」の解釈を、生成AI時代に合わせてより具体的に明確化すべきです。
•著作権者の学習拒否権の法定: オプトアウト方式を単なる業界自主ルールに留めず、著作権者がAI学習を拒否できる権利を法的に担保すべきです。これにより、AI開発企業に対し、日本の著作権者を軽視するような対応を許容しない姿勢を明確化します。
(2)AI学習データの透明性確保
•学習データ開示の義務化: AI開発企業に対し、学習に用いた著作物データのリストを公開するよう義務付けることを検討すべきです。これにより、著作権者が自らの著作物が無断利用されていないかを確認できるようにし、透明性を確保します。
•デジタル透かしの導入支援: 生成AIの出力物にデジタル透かしを付与することを推進し、AI生成物と人間による創作物を区別する技術的手段を普及させるべきです。
(3) 健全なAIエコシステムの構築
•技術中立性の尊重: AI技術の発展を阻害しないよう、AIサービス全般を過度に規制するのではなく、著作権者の権利保護とAI技術の活用を両立させるバランスの取れた法制度を整備すべきです。
•AI時代の新しい権利の検討: AIの生成物には現行の著作権法が適用されにくい現状を踏まえ、AIの発展に合わせた新たな権利や保護の枠組み(例:データベースの保護強化、肖像権・パブリシティ権の保護強化など)を検討すべきです。
2.2著作権協会への提言
(1) 著作権管理の強化と一元化
•集中管理制度の検討: 生成AIの学習データ利用に関する著作権処理を一元管理する集中管理制度の構築を検討すべきです。これにより、個々のクリエイターがAI開発企業と交渉する負担を軽減し、適切な利用料の徴収を可能にします。
•一括オプトアウト体制の構築: 個々のクリエイターがAI学習の拒否(オプトアウト)を申し出るのは負担が大きいため、著作権協会などが一括してオプトアウトできる仕組みを整備・運用すべきです。これにより、個々のクリエイターの意思をより確実に反映できます。
•ライセンス契約の推進: AI開発企業に対し、オプトアウトではなく、利用料を支払うライセンス契約を結ぶよう積極的に働きかけるべきです。これにより、著作権者の正当な利益を確保します。
(2) 国際的な連携と協調
•国際的な枠組みへの提言: 米国やEUなど、AI規制の議論が進む国・地域との連携を深め、日本の著作権者の意見を反映した国際的なルール形成を提言すべきです。国境を越えるAIの特性を考慮すると、国際的なルール整備は不可欠です。
•海外訴訟の動向把握: 米国で起こっている著作権訴訟(例:ニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟など)の動向を注視し、その結果を国内のAI関連議論や権利保護策に生かすべきです。
(3) クリエイターへの啓発と支援
•AI関連の啓発活動: クリエイター向けに、生成AIと著作権に関する最新情報、リスク、対策などを分かりやすく解説するセミナーやガイドラインを定期的に提供すべきです。
•著作権侵害に対する法的支援: 著作権侵害の被害を受けたクリエイターが、弁護士費用や訴訟費用を捻出できるよう、法的支援プログラムを構築・拡充すべきです。
参考サイト:
その他、AI検索を参考にしました。
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