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生成AIに関する訴訟リスクと対策

  • tokuhata
  • 2024年5月24日
  • 読了時間: 4分


 生成AIが急速に普及しつつありますが法律的な問題も多く、訴訟になるケースは珍しくありません。訴訟の多くは生成AIの学習データに関わる問題と、生成AIの生成物にかかわる問題に大別できます。生成AIの多くはインターネット上のデータを情報源としていますが、公開されているデータではありながらも個人情報を含んでおり、著作権に関わるデータソースも含まれているのでトラブルの原因になっています。



1.生成AIに関する訴訟

 生成AIに関する訴訟のついて代表的のものをいくつか挙げます。ほとんどがトレーニングデータに関連する訴訟です。


マイクロソフト、GitHub、OpenAIは数十億行の公開コードで学習したコード生成AIシステムであるCopilotに、適切なクレジットを提供することなく、ライセンスされたコードを再利用させたという訴訟を起こされた。1)

Midjourney, Stability AIの2社は、ウェブから収集した画像でツールをトレーニングすることで、何百万人ものアーティストの権利を侵害しているとの訴訟を受けた。1)

Getty Images は Stability AIに対し、画像生成AIをトレーニングするために同社のサイトから何百万枚もの画像を無断で使用したとして裁判を起こした。1)

ニューヨーク・タイムズ紙は、OpenAIとマイクロソフトを提訴した。生成AIを改善するために著作権で保護されたデータが使用されたとしている。この訴訟は、AIトレーニングにおける著作権保護されたコンテンツの扱いについて新たな議論を巻き起こした。2)

Margaret Atwood, James Patterson, 他9,000人以上の作家が、AIモデルのトレーニングにおける作品の使用に対する補償と同意を求める公開書簡に署名した。3)



これらのケースでは、原告は画像コンテンツを制作したアーティスト、オープンソースを提供したプログラマ、ニュースソースを製作した新聞社などコンテンツプロバイダというべき人々です。被告は生成AIのベンダーです。現時点では生成AIのユーザが訴訟を起こされたケースはないようです。



2.生成AI使用リスク補償

 最近では生成AIのベンダーが生成AIに関する補償サービスを提供する動きがあります。代表的な補償サービスを以下に挙げます。


Google

生成AIの学習に使ったデータと、生成AIによる出力の双方について法的リスクを補償する

対象となるのはクラウドサービスである「Google Cloud」と、ビジネス向けグループウエア「Google Workspace」である。AIシステムを訓練するための作品の使用と、システムが作成するコンテンツの両方に関する法的リスクを補償する。ユーザーが「他人の権利を侵害するために、意図的に生成された出力を作成または使用した」場合には、補償は適用されない。11)12)


Microsoft

マイクロソフトのCopilotまたはCopilotが生成する出力を使用したことで第三者が著作権侵害で顧客を訴えた場合、マイクロソフトは、顧客を弁護し、訴訟の結果生じた不利な判決または和解について金額を支払う。

対象は、Microsoft’s Copilots and Azure OpenAI Service, Word、Excel、PowerPointなどにおける生成AI利用も対象。また、開発者向けのGitHub Copilotも含まれる。13)14)


Adobe

Fireflyが作成した画像について著作権侵害で企業が訴えられた場合、アドビが法的に補償する。Fireflyは、Adobe Stockにアップロードされた数億枚の画像(許諾取得済み)、オープンライセンスコンテンツ、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツでトレーニングしている。このオファーは、企業顧客のみに提供される。15)16)


 2024年4月には生成AIのリスクを補償する専用保険まで登場しました。あいおいニッセイ同和損保とArchaicは、国内初となる生成AIのリスクを補償する「生成AI専用保険」を共同開発し2024年3月よりサービス開始しました。あいおいニッセイ同和損保が生成AI利用時の各種リスクへの補償を行い、Archaicが生成AI利用時のガバナンス体制構築支援を担当します。「生成AI専用保険」は、生成AIの利用によって発生した知的財産権の侵害による訴訟や情報漏洩、ハルシネーションによる不適切な表現の報道などに対し、企業が負担する様々な費用を補償します。17)


 現時点では生成AIのユーザが訴訟を受けるケースは起きていないようですが、ユーザを守るべく生成AIベンダーが補償サービスを提供し始めただけでなく専用の保険まで登場したことは興味深い傾向です。




 
 
 

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