朝日新聞社と日本経済新聞社が米国のPerplexity AIを提訴
- tokuhata
- 1 時間前
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朝日新聞社と日本経済新聞社は8月26日、米国のPerplexity AI(以下パープレキシティ)を提訴しました。生成AIを使った検索サービスで記事を無断で利用されているとし、著作権侵害行為の差し止めと各22億円の損害賠償を求めました。すでに各種ニュース記事がリリースされているので提訴の詳細については省略し、ここでは追加情報として、法域の問題、今後のパープレキシティの行動予測等について注目点をメモします。
提訴の要点
・パープレキシティは遅くとも2024年6月ごろから生成AIを使った検索サービスで記事を無断で利用・複製した(著作権法違反)
・要約内容に誤りがあるなど記事と同一でないにもかかわらず、引用元を日経や朝日とすることで社会的信頼を傷付けた(不正競争防止法違反)
・侵害行為の差し止めと各22億円の損害賠償、朝日・日経両社合わせて44億円の賠償を求める
・両社はいずれも「許可なくAI学習などのためにデータの蓄積や複製をしてはならない」とする利用規約を設けている
・両社は自社サイトに「robots.txt」という特定のファイルを設置して利用拒否の意思表示をしているが、パープレキシティは無視して利用を続けている
・パープレキシティは質問に対して幅広い情報源から関連する情報を抽出して要約して回答するサービスを提供していると主張する
・パープレキシティは27日、「訴状が届いていないので現時点でコメントできない」とメールで回答した
関連する他社の動き
・米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を傘下に持つダウ・ジョーンズなどは24年10月、著作権を侵害されたとしてパープレキシティを提訴した。パープレキシティは「検索機能は著作権法で保護されていない公開された事実情報に基づく」と反論している。
・日本でも読売新聞東京本社、大阪本社、西部本社が7日、記事の無断利用が著作権侵害に当たるとして約21億円の損害賠償などを求めて提訴した。
・国内の大手報道機関3社が訴訟で足並みをそろえるのは異例で興味深い
法域の問題
・東京地裁での提訴は可能:日本国内で著作権侵害が発生したと主張すれば、日本の裁判所が管轄権を持つ可能性はある。
・被告が米国企業でも訴訟は可能:ただし、被告が日本に拠点を持っていない場合、訴状の送達や判決の執行には国際的な手続きが必要。
・執行の壁:仮に日本の裁判所が損害賠償を認めても、米国でその判決を執行するには、米国の裁判所で承認される必要がある。
つまり、受理される可能性は十分あるものの実効性を持たせるには国際的な法的対応が必要です。
パープレキシティが取り得る対応策(現時点では同社はノーコメントとしている)
日本国内での法的代理人の選任
東京地裁での訴訟に対応するには、日本の弁護士を通じて正式な答弁書を提出する必要がある。
robots.txtの遵守強化
今後の信頼回復のために、robots.txtによる収集拒否を技術的に確実に反映する措置が求められるかもしれない。
記事データの削除と利用停止
訴訟対象となった記事の保存データを削除し、AIの回答生成に使わないようにすることで、差し止め請求に応じる可能性もある。
和解交渉の開始
訴訟の長期化やブランド毀損を避けるため、朝日・日経と和解交渉に入る可能性もある。
米国でのフェアユース主張
米国法ではAI学習に関してフェアユースが認められる余地があるため、将来的には米国での反訴や防御戦略も視野に入る可能性がある。
補足:
robots.txtとは?
ウェブサイトの管理者が、検索エンジンやAIクローラーに対して「どのページをクロールしてよいか/してはいけないか」を指定するテキストファイル。
例:User-agent: GPTBot に対して Disallow: /news/ と書けば、AIクローラーは /news/ 以下のページを収集しないよう指示される。
ただし、法的拘束力はない。従うかどうかはクローラー側の設計次第。
類似の仕組みにオプトイン・オプトアウト方式がある。
オプトイン:ユーザが明示的に「許可します」と同意した場合のみ、情報収集や利用が可能。
オプトアウト:ユーザが「拒否します」と意思表示しない限り、情報収集や利用が行われる。
日本の個人情報保護法では、広告メールなどは原則オプトイン方式が義務化されている。

つまり、robots.txtはサイト側の「オプトアウト意思表示」に近いが法的なオプトアウトとは別物です。AIクローラーがrobots.txtを無視して収集した場合、著作権侵害や不正取得とみなされる可能性があり、今回の訴訟ではその点が争点になっています。
今まで生成AIに関する訴訟事例は米国が大半でしたが日本国内でも問題が表面化してきたといえます。今後の展開に注目しましょう。
日経の記事
朝日の記事
読売の記事
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