8Kテレビはオーバースペックか
- tokuhata
- 2022年1月31日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年11月12日
テレビの解像度を議論するときに併せて考慮しなくてはならないのが画面の大きさと視聴距離です。テレビを視聴するときに感じる解像感はテレビの解像度、画面の大きさ、視聴距離により変わるからです。4Kテレビと一口に言っても画面サイズが変わると画素密度が変わります。画素密度は通常ppi (pixels per inch) で表します。すなわち1インチの中に画素がいくつあるかで表します。おなじ4K でも画面サイズが大きくなるほど画素ピッチが大きくなります。そして同じ4Kテレビでも視聴距離が2mと3mでは視聴者の網膜上に結像する像の大きさが異なります。
人間の目には視認限界があります。一般的な視力判定にはランドルト環が用いられます。ランドルト環(太さ1.5mm,直径7.5mm)の切れ目(1.5mm角)を5m離れて見分けられる視力を1.0とし、この切れ目の視角はほぼ1分(1度の1/60)とされています。当然ですが視力には個人差があり、普通の人は裸眼で1.0程度、かなり良い人でも2.0というところでしょう。余談ですがアフリカ出身のオスマン・サンコンさんの視力は6.0という話を聞いたことがあります。
メーカーが推奨するテレビ視聴距離は視力1.0の人の視認限界を前提として計算されているようです。詳細はメーカーの資料を見ていただくとしてここでは要点のみ引用します。画面解像度によって視聴距離と画角が決まると言われており、例えばフルHDなら3H(画面の高さの3倍、画角30度)、4Kなら1.5H(画面の高さの1.5倍、画角60度)、8Kなら0.75H(画面の高さの0.75倍、画角100度)というのがテレビ業界の大方の意見のようです。この視聴距離はこれ以上近づくとピクセルが見えてしまう限界の距離を示します。フルHD、4K、8Kと解像度が高くなるにつれ視聴距離が短くなります。つまり8Kの場合0.75Hというのは、「テレビの解像度の限界まで見る」という前提に基づく距離です。あるメーカーによれば8Kの映像体験に適した視聴距離は1.5Hの方がふさわしいという意見もあります。
4Kテレビの場合 65インチ H≒84㎝ 1.5H=126㎝
8Kテレビの場合 65インチ H≒84㎝ 0.75H=63㎝(1.5Hとすれば126cm)
解像度に関する限り126㎝以上離れてみる場合4Kと8Kの差は認識できないということになります。8Kテレビが4Kテレビに対して差別化を図るのであれば大画面で圧倒的なリアリティによる臨場感を求めることを追求してはじめて真価が発揮されると思われます。その観点ではオリンピックやワールドカップなどのスポーツイベントは8Kに適した題材だと思われます。ただしかなり大型の画面サイズとそれを収容できるスペースが必要です。日本の一般的な住宅事情では難しいかもしれません。
8Kのアプリケーションはテレビに限りません。テレビ以外では32インチ程度のPCモニターを数十センチの至近距離で見ることが考えられます。一般人には大型の8Kテレビを求めるよりはよりこちらのほうが現実的に思えます。(続く)

(写真:メーカーのサイトから引用)
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