写真は一点ものアートになりうるか~NFTの可能性
- tokuhata
- 2024年1月6日
- 読了時間: 4分

写真は絵画や彫刻などのように一点ものアートになりうるでしょうか。写真はフイルム時代から同一プリントを多数作成することが容易でした。デジタルコンテンツになり、複製はいうまでもなく、レタッチや修正がさらに容易になったことから一点ものとは相反する存在のように思えます。ところが最近、写真に限らない広い意味でのデジタルコンテンツに希少性と独自性を保証することにより、デジタルアートとして資産価値を持たせる動きが生まれつつあります。それがNFTです。
NFTとは
NFTとは「Non-Fungible Token」の略で代替不可能なトークンのことです。代替不可能とは、同じものが存在しないことを意味します。トークンという単語はかなり意味が広いのですがここでは「デジタル証明書」「デジタル鑑定書」を意味します。NFTはブロックチェーン技術が使われている特別な種類のトークンです。一点ものである資産価値を付与できるデジタルアートがNFTアートです。NFTアートは、デジタルコンテンツにトークンIDを付与することで唯一性を証明できるようにしたものです。トークンIDがブロックチェーン上にデータとして記録され、デジタルアートの唯一性を保証する識別子となっています。
ブロックチェーンとは
NFTを説明するためにはブロックチェーンの話を避けて通ることは難しいので要点のみ述べます。ブロックチェーンは履歴データとそのハッシュ値をブロックへ格納し、複数のノードに分散して保管しています。分散管理された膨大な量のハッシュ値を変更するのは非常に困難であり、履歴データを複数のノードによって保管しているため、改ざんはほぼ不可能です。コピーや改ざんができないため、所有者は唯一性を確保できます。
ここで重要なことは、NFTがトークンという独立したデータとして存在するのではなく、あくまでもブロックチェーンというデジタル台帳の記載方式であるということです。換言すれば、取引履歴を示しているだけです。NFTはブロックチェーンの一部であって、独立して存在しているものではありません。このことからNFT含めて丸ごとコピーすることはほぼ不可能です。
ブロックチェーンの応用技術は多数ありますが、その一つがNFTです。そして、NFTの応用技術もまた多数あります。アート、ゲーム、メタバース、真贋証明などですが、ここではデジタルアートにフォーカスします。NFTアートの取引では、オンラインのNFTマーケットプレイスにNFTアートをアップロードして出品します。購入者が確定し、代金の支払いが済むとNFTに所有者の取引履歴が記録されます。
NFTマーケットプレイス
国内外の代表的なNFTマーケットプレイスには、以下のようなものがあります。
日本のNFTマーケットプレイス
1:Coincheck NFT
2:Adam by GMO
3:LINE NFT
4:SBINFT(旧nanakusa)
5:TOKEN LINK
海外のNFTマーケットプレイス
1:OpenSea
2:Rarible
3:SuperRare
4:Nifty Gateway
5:NBA Top Shot Marketplace
NFTアートを出品・購入する際には、仮想通貨ウォレットの準備とNFTマーケットプレイスのアカウントを作成する必要があります。NFTアートを出品・購入する方法についてはネット上で情報検索可能ですので詳細は省略します。
写真は一点ものアートになりうるか
ここで本題です。写真は絵画や彫刻などのように一点ものアートになりうるでしょうか? 先に述べた手続きを踏めば写真をNFTコンテンツ化し、所望のマーケットプレイスに出品したり、他人のNFTアートを購入したりすることが可能になります。しかし、購入することにより、どのような権利が得られるかについては要注意です。
NFT取引において慎重に理解しておかなくてはなくてはならないのが所有権と著作権です。民法上、NFTに「所有権」は発生しないと考えられています。民法では所有権とは物に対する権利であり、有体物(動産、不動産)についてのみ認められる権利であるとされているからです(民法第206条、同法第85条)。したがって所有権ではなく、「誰にどのような権利が発生するか」という観点で考える必要があります。一方、著作権は著作者が有します。著作権は、著作者が著作物を他人が利用することを許諾する、あるいは禁止する権利です。NFTを購入しても所有権も著作権も得ることはできません。NFTを購入すると、個人使用の範囲で楽しむほか、著作者が定めた範囲での利用はできます。しかし、不特定多数の人に配布することはできません。
写真をNFTアートとして売買することが受け入れられるかどうかについては、上記の様に法的課題だけでなく、従来の写真の考え方との親和性にも疑問が残り不透明です。それらの要因を鑑みると、個人的には写真とNFTは相性がよくないと感じます。しかしながら、Adobeのように自社のツールにNFT対応機能を持たせる動きがあるのも事実ですので引き続き経緯を注目したいと思います。
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