コンテンツ認証のための基礎技術~CAI編
- tokuhata
- 2024年1月26日
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生成AIが作成したコンテンツが氾濫する昨今、デジタルコンテンツの真正性をどのように担保していくかということは重要な課題です。このコンテンツは誰がどのようにして作成したのか、どんなツールを使用して作成したのか、実際の現象をカメラで撮影したものか、生成AIなどで作成されたものなのか、等を透過的に示すことが求められます。ここではその課題に取り組む組織、CAI:Content Authenticity Initiative について整理し、写真への適用可能性について整理します。
CAIは2019年にAdobeにより発表された、企業、NGO、学識経験者などのコミュニティです。主な協力者にはアドビ、BBC、マイクロソフト、ニューヨーク・タイムズ、ライカ、トゥルーピック、クアルコムなどが含まれます。日本からはニコン、キヤノンが参加しています。CAIのツールを使えば、コンテンツ作成に使用したAIモデルなどの情報を視聴者に伝えることができ、AI使用に関する透明性を高めることができます。
写真、ビデオ、ドキュメントを始めとするあらゆる種類のデジタルコンテンツを対象としており、tamper-evident provenance(改ざん防止証明、すなわち修正履歴証明)をCAIデータとしてコンテンツファイルに埋め込みます。コンテンツの生成、修正、配布等の作業に伴い、その履歴がCAIデータとして反映されます。CAIデータの保存先は、コンテンツファイル自体に埋め込むか、AdobeのContent Credentialsクラウドに保存するかを選択することができます。
CAIと関連の深い技術としてC2PA:Coalition for Content Provenance and Authenticityがあります。C2PAは、Adobe、Arm、Intel、Microsoft、Truepicが立ち上げた共同開発財団プロジェクトです。メディア・コンテンツの出所と履歴を証明するための技術標準の開発を通じて、オンラインで誤解を招く情報の蔓延に対処することを目的とします。C2PAは、クリエイター、編集者、パブリッシャー、メディア・プラットフォーム、消費者のためにエンドツーエンドのオープンな技術標準を提供することで、CAIの取り組みを補完します。
CAIは著作権管理に関するものではありません。そして、CAIは間違った情報や偽情報を判定する機能でもありません。CAIの規格は、クリエイターがコンテンツをどのように作成したかを透過的に示すものです。エンドユーザはCAIにより、誰が、何を、どのように画像を変更したかというメタデータにアクセスすることができますが、その画像が本物であるかどうかはユーザが判断する必要があります。
CAIのもっとも重要な特徴は、改ざんができないということです。もし不正に変更された場合は、その変更は履歴として記録されます。CAIは暗号技術を使用して生成されます。CAIはブロックチェーン互換 (Block chain compatible) ですがCAIに対応した機能(CAI-enabled features)はブロックチェーンを使用していません。CAIではコンテンツに関連付けられた CAI メタデータを、コンテンツ・クレデンシャルと呼びます。CAIデータの生成と運用に関するツールの具体例としてAdobeのContent Credentials 機能があります(別記事参照)。Content Credentials 機能はNRTへの適用をサポートします。NRTはブロックチェーン応用技術のひとつです。
以下に注意点をまとめておきます。
(1) CAIはブロックチェーン互換 (Block chain compatible) ですがブロックチェーンを使用していません。
(2) CAIは偽コンテンツ検出機能ではありません。CAIデータはクリエイターがコンテンツをどのように作成したかの履歴を示すデータです。ユーザはCAIデータを見ることができますが、そのコンテンツが本物であるかどうかはユーザ自身が判断しなくてはなりません
(3) 現状のCAI仕様では、ユーザ自身が生成したオリジナルコンテンツではなくどこかから拾ってきた他人のコンテンツでもCAIデータの埋め込みが可能です。ユーザは、エクスポートしたコンテンツにプロデューサーとして自分の名前を付けることができますが、これは、そのユーザがコンテンツをエクスポートしたことを示すだけであり、必ずしもそのユーザがコンテンツを作成したことを意味するものではありません。
Content Authenticity Initiative (CAI)
Coalition for Content Provenance and Authenticity (C2PA)
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