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「AIトレーニングはフェアユース」OpenAIとNew York Timesなどの訴訟について米国司法省が意見書を提出

tokuhata
9月5日
読了時間: 4分

更新日:9月7日




 2026年9月初旬、米国司法省が、New York Times対OpenAIなどのAIを巡る著作権侵害訴訟(In re OpenAI Copyright Infringement Litigation)において「意見書(Statement of Interest)」を提出しました。意見書は、政府が係争中の訴訟に米国の利益に関する見解を示す文書であり、裁判所を拘束するものではありませんが、司法判断に影響する可能性があります。


以下に要点と、著作権の観点に基づく客観的な分析をまとめました。


*意見書の要点

 本意見書の最大の要点は、「AIの大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに既存の著作物を使用することは、原則として米国著作権法上の『フェアユース(公正利用)』に該当する」と結論付け、AI開発企業側の立場を米政府として強力に支持している点にあります。司法省は主に以下の4つの理由から主張を展開しています。


国家の利益と安全保障:AI技術の発展と統合は米国の国家安全保障や経済的繁栄において不可欠である。フェアユースを狭く解釈してLLM開発を制約することは、米国の科学的・創造的進歩を阻害する。


市場競争の保護(独占の防止):AIの学習データ利用に対してライセンス契約や高額な使用料の支払いを義務付けた場合、膨大な資金力を持つ一部の巨大IT企業のみが開発を独占する「寡占状態」に陥り、公益に反する。


利用の変容性(フェアユース第1要素):過去の最高裁の判例(Google対Oracle等)に照らしても、AIモデルの学習プロセスにおいて著作物を解析する行為は「極めて変容的(transformative)」であり、新たな価値を生み出している。


市場への影響(フェアユース第4要素):著作権者側は「AIが同じジャンルの作品を大量生成することで市場が希釈化する(奪われる)」と主張しているが、司法省はこの「希釈化理論」を「重大な欠陥がある」と一蹴した。AIの出力結果が元の著作物と「実質的に類似」していない限り、法的に認知される市場への損害には当たらないとしている。

*要点ここまで


考察

・著作権者にとっての利益・不利益


利益:意見書は「出力結果が原著作物と実質的に類似している場合」の著作権侵害リスクは否定していません。つまり、丸写しや直接的な海賊版コピーの生成に対する法的保護は維持されています。


不利益:自身の著作物が無断かつ無報酬でAIの学習データとして利用されることが正当化されます。さらに、「作風やジャンルが似たAI作品によって仕事が奪われる」という市場の希釈化の主張が退けられたため、データ利用のライセンス料という新たな収益源を確保することが事実上極めて困難になります。


・著作物利用者(AI開発者・利用者)にとっての利益・不利益


利益:著作権侵害による巨額の賠償リスクが大幅に軽減されます。高額なライセンス料を払うことなくインターネット上の広範なデータを利用できるため、スタートアップやオープンソースのコミュニティでもAI開発に参入しやすくなり、イノベーションの加速とコスト低下の恩恵を受けられます。


不利益:無制限の利用が許可されたわけではなく、「実質的に類似したコンテンツを出力しない」ようにするための技術的なガードレール(安全装置)やフィルターを構築・維持する責任とコストは、引き続き利用者の側に課されます。


・両者のバランスを考慮しているか

 客観的に見て、本意見書は「AI開発者(利用者)および米国の国家戦略」に極めて大きく傾斜しており、両者のバランスを均等に考慮しているとは言い難い内容です。

確かに「実質的な類似性」という従来の侵害基準は維持しており、著作権者への最低限の配慮は見られます。しかし、著作権者が最も懸念している「人間のクリエイターの持続可能性」や「データ提供に対する対価の還元」といった課題よりも、米国における「AI技術覇権の維持」「国家安全保障」「新興企業を含めた市場競争の促進」というマクロな国益を優先させています。総じて、既存のコンテンツ産業をある程度犠牲にしてでも、国家としてAIテクノロジーの発展を強力に推進するという功利主義的な政策判断が色濃く反映された文書と言えます。


 意見書は、政府が係争中の訴訟に米国の利益に関する見解を示す文書であり、裁判所を拘束するものではありませんが、司法判断に影響する可能性があり、判決が注目されます。なお、米国の司法省(Department of Justice)は行政府であり司法府ではありません。

米国司法省(DOJ)=法務省的な行政機関、すなわち行政府です。



STATEMENT OF INTEREST OF THE UNITED STATES


Justice Dept. Sides With OpenAI in New York Times Copyright Suit - The New York Times


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